これはノンフィクション。
道すがら出会ったのは、木陰で羽を休めるオナガアゲハ。光を孕む美しさを見つめていると、すぐそばに大きなクモの巣。
危ない。蝶を守りたい。巣を払おうと近づいたものの、命のひりつきが私を止めました。対峙する蝶とクモ。生きるか死ぬか。
美しいから助けるのか?人間が手を出していい世界ではない。そう気づいた私は命のゆくえを確かめることなく、その場を去りました。
蝶はどうしただろう。想像し怖くなりましたが、飛ぶことを諦めるわけがありません。野生には生きないという選択肢さえ存在しません。
命は命のために生まれ、形を変え続いていきます。
ただそこにある自然と共に、私もまた命の塊でしかないのです。
淡い夢の中ではなく、鮮やかな現実をまっすぐに飛ぼうとする、開ききった命のエネルギーを描きました。
蝶を描いた後、背景に白を何度も重ねました。
写真では分かりづらいのですが、わずかに白が盛り上がっています。
滲む色と馴染むよう白の濃度を調整し、溶け合う部分も残しました。
あたらしい空へ。