海へ向かいました。
恵みと畏れをもたらす存在が目の前に広がっています。
あてもなく波打ち際をなぞり、腰掛けた白い流木。後れ毛を揺らす風、左の頬には光が染み、潮騒は私がいないかのように過ぎていきます。
何もなく、すべてがあるという気持ちになりました。
海を前にしていると思っていましたが、海のそばに座っているのだと気づきました。対峙ではなく繋がる感覚。人間も自然の一部です。
そして自然は意図して美しさを生み出しません。
ただそれでしかなく、ひたすらそこにあるだけ。
芸術は人間の手によるものであり、自然を表現することはできても、自然そのものは芸術ではありません。
そう理解しつつ、根源として揺るぎない生命の温度を感じた瞬間を、沁みてゆく光や風とともに描きました。