不穏な声が響いてきました。
眩しさを避けながら見上げると、カラスの群れ。
いつもいないところに集まるのは、林の向こうに何かが死んでいるから。
知っている存在だったら悲しい。
まさか、よく姿を見せてくれたあのキジだろうか…ちょうど縄張りの真上。
そんな不安も頭をよぎり、恐るおそる近づきます。
靴越しに土と草の感触。
枝から枝へと渡り、濁った声で鳴くカラス達。
呼び合い、威嚇するかのようなものものしい空気。
彼らは、獲物をとられたくない。
帰れと言うのがわかりました。
その声と、木々のざわめきだけ。
何かが死んだから何だというのだろう。
それは野生においてとても自然なことです。
見に行くべきではないし、山のサイクルへ関与しないよう。
私は林の向こうを確かめることなく、背を向けました。
生と死、脈々と続く中の一瞬。
よく晴れた夏の終わり。
ヤマガラスを通して知った、しんとした命の感触を描きました。